橋場 信夫さん(昭和44年・D卒)個展開催

近作「不二(富士)シリーズ連作」を一挙展示

現代美術作家、橋場信夫さんが、近作「不二(富士シリーズ連作)を一挙に展示する個展を開催します。

会期:2020年9月11日~22日
会場:帝国ホテルアーケード 絵画堂

個展開催にあたって橋場さんに作品「不二(富士)シリーズ連作」への想いを語っていただきました。

不二(富士山)連作について

思い返せばもう40年以上も前になりますが、1978、79年と私はパリに滞在していました。ヨーロッパ各地の美術を見ることとパリの空気の中で絵を描くことが目的でした。

 訪れた南仏ラスコーの洞窟で、ステンシルで描かれた「手形」を見たときの感動は今でも昨日のことのように思い出します。新石器時代の人の痕跡になぜ魂が震えるのだろう。それはまた、私にとっての永遠のテーマとの出会いでもありました。帰国後、私は「根源」や「目に見えないもの」をテーマに制作を続けてきました。

 昨年、箱根駒ケ岳の山頂で、この世のものとは思えないような富士が幽玄に佇んでいました。これは何かの啓示だろうか?描かねばならない。そう思え一作目を描き終えました。たまたま来日していたフランス人の友人に作品を見せたところ、富士山のシリーズの展覧会を来年夏にフランスで開催したいと申し出がありました。それをきっかけに不二の連作が始まりましたが、今年に入り「コロナ禍」で展覧会は残念ながら延期となってしまいました。

 富士の絵といえば葛飾北斎の「富嶽三十六景」を誰もが思い浮かべるでしょう。それは、江戸時代に流行した「富士講」という山岳信仰をテーマにした作品です。何をしていても、どこにいても富士が見守っていてくれるという意味合いから富士のある風景画になっています。

 なぜ今富士なのか?と問われれば「富士は日本の霊性の中心だから」なぜ抽象から具象へ?と問われれば「それが一番適した表現だから」と私の答えはシンプルです。しかし、「根源」や「目に見えないもの」を描く私の姿勢は変わりありません。私は富士のある風景ではなく、日本人の魂の根源の富士、富士の霊性を描きたいのです。

 誰もが予期しなかった「コロナ禍」。価値の変化、生活の変化を容認せざるをえず、未来への不安を抱く時、富士を描き続けてきたことは、あの駒ケ岳でみた富士がやはり啓示であったのだ、と思えるのです。

 私は今年古希を迎えます。それにちなんで描いた70点の富士の一部を展示する個展を、帝国ホテルアーケードにある絵画堂で9/11〜22まで開催いたします。ご高覧頂ければ幸いです。

橋場信夫 略歴
1969 都立工芸高校デザイン科卒
1978,79 パリ滞在
1993,94,95,2003 国際コンテンポラリーアートフェアNICAF
2000 沖縄サミットのための制作
2005,07,08,09,10,11 アートフェア東京
個展
不忍画廊、ギャラリー無境、アートフロントギャラリー、他
コレクション
上皇后陛下美智子様
ダライ・ラマ14世猊下
WHO西太平洋事務局
外務省、慶應義塾大学
都立工芸高校
ハイアットリージェンシー
パレスホテル、ザ・ペニンシュラ
ANAインターコンチネンタル、