三味線について



母校一階のOB・OG展示に出展された草野 浩毅さん( I科2008卒・株式会社柏屋 製造部門)から、「三味線について」の寄稿をいただきました。



今回、インテリア科 OB・OG 展示に参加させて頂いた縁で展示作品や仕事に関してお話をする機会を頂きました。 株式会社柏屋は、和楽器及び関連付属品を取り扱う総合卸問屋で、製造部門では三味線の新規製作と修理・メンテナンス等が主な業務になっています。

三味線の構造と作業工程

三味線の構造は、細長い「棹」を太鼓状の「胴」に貫通させて接続し、棹に 3 本の「糸(弦)」を掛けたものです。 棹の太さで「細棹(ほそざお)」・「中棹(ちゅうざお)」・「太 棹(ふとざお)」と3つに区分しています。 三味線作りに用いられる木材は主に「花梨(かりん)」「紫檀 (したん)」「紅木(こき)」の3種類があります。 堅く重い木材で色味は赤や褐色系ですが、紫檀や紅木には時間経過で色味が黒くなっていく特徴があります。

三味線作りの作業工程は大きく分けて4つです

  1. 細長く糸がかかる部分でもある「棹作り」
  2. 4枚の板を組み合わせた「胴作り」
  3. 胴の両面に皮を張る「皮張り」
  4. 棹に糸掛け用の受け具を付ける作業と棹と胴を接続する作業を合わせた「上下仕込み」

新規棹製作の仕事では棹作りを専門としていて、皮の張られた胴と棹を組み合わせて仕上げる所までを 1 人で行っています。 胴は既製品を使い、皮張り作業は専門の職人に依頼しています。

展示作品「花梨長唄三味線 仕込柄」

今回展示している三味線は私が製作した物の1本で、花梨材を使用した長唄用の細棹になります。
(左の写真)

商品として卸される前の状態で、棹作りの作業段階から「仕込み柄(しこみがら)」と呼んでいます。この後に胴の両面の皮を張り、糸をかける作業をして装飾小物を揃えると完成になります。(右の写真) 仕込み柄の段階は、職人の手元にある時や楽器店に卸されるときに見られる状態で一般の人があまり目にする事のない珍しいものだと思います。

仕事で使う道具類

仕事で使う道具は主に鑿(のみ)や鉋(かんな)・鋸(のこぎり)・棒やすり等、作業に合わせて自分で加工・調整をする事もあります。
一部(ノミと小刀・カンナ)を写真で紹介します。

左のノミは刃先の幅で用途が分かれていて、写真には同じ幅で新しい物の順に並べてあります。刃が短くなっている古い物は、先輩から譲り受けた物や自分が工芸時代に購入した物で10年以上使っていて何度も刃研ぎをした結果、写真の状態になりました。
ちなみに、木を削る時は叩きノミとしてではなく、突きノミとして使う関係で柄の部分が長くなるように調整を加えています。 右のカンナは刃先の幅と角度で用途が分かれていて、鋭角は平刃(ひらば)・直角は立刃(たちば)・鈍角は逆立刃(ぎゃくたちば)と呼んでいます。立刃カンナや逆立刃カンナは堅い木材を削るのに適していて、削り面をきれいに仕上げるために使います。

道具の使い方や手入れについては工芸時代の経験を生かす事が出来て、ノミやカンナの刃研ぎ等の基礎技術の習得に役立ちました。私が三味線作りの仕事について今年で15年になります。仕事を任される事も増えましたが、技術の向上に終わりはなく日々研鑽を積んでいるところです。
今回の展示作品を通して少しでも三味線に興味を持っていただければ幸いです。