「もっと描きたい!」古木嘉雄さん(1970年・M科卒)

ギタリスト 川崎美術協会会長賞

早いもので工芸高校を卒業して半世紀以上の月日が流れました。
在学中は機械科でしたが絵が好きで家ではよく人物画を描いていました。

会社勤めでは電気部品メーカーで設計の仕事をしていましたが、絵はあくまで趣味で仕事の合間に描いていました。ちょうど経済が高度成長期と重なって休日出勤したり、またその後のバブル崩壊で会社が縮小したり人手不足になったりで、落ち着いて絵を描く時間がありませんでした。それでも自然の風景などをスケッチしたりして、もっともっと絵を描きたいという想いは常にありました。これで終わりたくないという気持ちでした。  

六十五歳で退職した今は月に二回ほど絵画教室に通い毎日絵を描いています。今日まで描き続けているのは会社勤めをしていた時の「描きたい!」という強い気持ちが蘇るからだと思います。現在の私の絵画制作の原動力になっています。

椅子に座る女性 横浜市長賞

退社後三年間はデッサン力が不足していましたので鉛筆や木炭などで絵画教室のモデルを前に繰り返しデッサンをしました。その後油絵を始め大きな作品も手がけるようになり、現在は展覧会に出品できるようになりました。賞も頂くことができ本当に光栄なことと思います。

私の作品はよく古典的と指摘されることがあります。確かに抽象絵画や現代アートの作品と比較するとかなりアカデミックな作風です。絵画は具象、抽象にかかわらず造形力が問われると思いますが、その基礎としてデッサンの必要性を考えております。古典からそれらを学ぶものは数多くあります。私の絵はまだ初歩の段階でこれから独自の世界を創造していかなければならないと感じております。

日本画の東山魁夷さんの言葉に『描くことは、祈ること』とあります。私の絵が多くの人の心に届くように、いつも絵に向かう時はそのような気持ちで制作に取り掛かかっています。

最後になりましたが、M科四十五年卒の工芸同窓会の皆には感謝しかありません。展覧会に何度も足を運んでくれ、応援し励まし続けてくれている仲間がいることは私の絵の制作に大きな力となっております。

妙なる調べ 神奈川県知事賞