「人の手が受け継ぐもの」 大澤駿也(2017年・I卒)
今回、インテリア科のOB・OG展示および在校生との交流会に参加し、私の仕事や展示内容についてお話しする機会をいただきました。 私が勤めている株式会社池袋松屋は、首都圏を中心に、建物の壁や床などの内装仕上げ工事を行っている会社です。壁紙の企画・制作・販売・卸も手がけています。
その中で私の仕事は、実際に現場に出て、職人として壁紙を施工することです。普段は「ビニールクロス」と呼ばれる一般的な壁紙を貼る工事が中心ですが、時には特殊な工事に携わることもあります。
今回の展示では、葛飾区にある東京拘置所敷地内に建つ旧小菅刑務所庁舎の保存改修工事において行った、壁紙の復元工事について紹介しました。この建物は昭和4年(1929年)に竣工しましたが、外装・内装ともに劣化が進み、2021年から2023年にかけて修復・復元工事が行われました。
弊社は壁紙の施工を請け負いましたが、元の壁紙はすでに剥がされ、ほかの壁紙に複数回張り替えられており、創建当時の様子が分かる資料は、約100年前の白黒写真しか残っていませんでした。そこで、その写真に写る壁紙の柄を手がかりに、弊社が所有する、かつて存在していたメーカーの見本帖を調査し、同一の壁紙を特定しました。 色については、現場にわずかに残っていた切れ端をもとに見本帖と照らし合わせ、カラーパターンを特定することで再現が可能となりました。ただ、当時その壁紙を製造していた会社は今はなく、同じ製品を仕入れることはできないため、インクジェット壁紙を用いて再現が行われました。
インクジェット壁紙は近年普及してきた技術で、自由度の高い色柄表現が可能です。また、一般的な塩ビシートとは異なり、壁紙特有のエンボス加工によって、さまざまな質感を表現できる点が特長です。
施工段階では、私はこの現場で職長として施工に携わりました。一緒に働く職人さんたちに作業の指示を出しつつ、現場監督や他職種の方々と打ち合わせを行いながら、自らも施工に加わりました。創建当時とまったく同じ位置に同じ柄がくるよう施工する必要があり、苦労もありましたが、無事に完成させることができました。
この建物は、その構造や特徴的な外観、歴史的価値が評価され、2024年に重要文化財に指定されました。今回の工事によって創建当時の姿へ復元されたことが、文化的価値の再評価につながったと聞いており、その工事に携わった一人として誇りを感じています。
このような工事は、多くの職人の技術と経験によって支えられています。こうした仕事を次の世代へとつないでいくためには、人の存在が欠かせません。 こうした歴史ある建物だけでなく、家や学校も含め、身の回りの建物はすべて、誰かの手によって造られたものです。
そしてそれを直し、守り、次の時代へ残していくのも、同じく人の手による仕事です。 しかし近年、建築業界では高齢化が進み、将来の職人の担い手不足が深刻な課題となっています。 新しい建物を造るだけでなく、文化的・歴史的価値のある建物を修繕・改修し、次の世代へ受け継いでいくことも、建築業の重要な役割です。 その現場では、インテリアの知識や感覚が大きな力になります。
今は想像しにくくても、今日の授業が将来の現場につながっていくことがあります。 ものづくりを学んでいる工芸高校の皆さんが、学校での学びが社会の仕事につながっていることを実感し、将来の選択肢の一つとして建築や内装の仕事に興味を持ってもらえたら嬉しく思います。








