「連載-11 もっと知りたい都立工芸の歩み」意匠が凝らされた校舎内部

 1927年(昭和2)8月31日に竣工した新校舎は、耐震耐火の鉄筋コンクリート3階建て。芸術的にも工学的にも時代の先端を行くものをめざした。

 鉄製の正門を入り、車寄せをもった正面玄関を入ると、大理石が床と壁の腰高(1.8メートル)まで貼ってある。隣の応接室との境の壁にはアーチ型の窓がくり抜かれ、創立年と復興年を示す皇紀の数字、そして学校の内容を表すステンドグラスがはめ込まれていた。玄関からつづく16坪の大広間もまた壁に大理石を貼り、床の光沢消しタイルが落ち着いた雰囲気を醸し出している。 

 大広間から3階の講堂へと到る階段は、大理石の手すりにブロンズの金具をあしらい、中庭からの光に色鮮やかに浮かぶステンドグラスが各踊り場にはめ込まれていた。

 1階には生徒昇降口、教務室、屋内体操場等とテニスコートを兼ねる中庭。2階には物理や化学、地歴の専門教室等。3階には600人を収容する大講堂。隣には装飾実習室兼貴賓室があり、寄木細工の床に支那絨毯を敷き、本校教師、生徒の優れた製作品を調度とし、天井にはレリーフが施された豪華な1室だった。

 大小の部屋数は109。各科の工場、実習室、材料室はもとより、築地時代にはなかったクラスの教室が設けられた。採光通風に配慮がなされ、当時としては珍しくトイレはすべて水洗式という進んだ設備であった。この年の年末には、近藤校長の発議で新校舎完成を記念して、グランドピアノが講堂に据えられた。

 ブロンズの装飾を配した外観といい、優れた内部の機能性といい、まさしく時代の先端を行く都市工芸学校の殿堂にふさわしい新校舎である。

※このコラムは「工芸学校80年史」「都立工芸100年の歩み」から文章を引用して再構成しています。